日本で「マニフェスト(政権公約)」が選挙の中心に据えられたのは2003年。
春の統一地方選での先行導入を経て、同年11月の第43回衆議院総選挙において主要政党がマニフェストを掲げて争ったことを契機とする。
政治不信と制度改革の要請
政治不信の具体例
- 汚職・スキャンダル
リクルート事件など、政治家・行政・企業の癒着をめぐる事件が相次ぎ、国民の信頼が低下した。 - 公約の空文化
選挙公約が抽象的で「何を・いつまでに・どうやって」を欠き、実効性が不明確だった。 - 政策の反故
選挙後に掲げた政策が修正・撤回されることが多く、有権者との契約性が疑問視された。 - 頻繁な内閣交代
首相交代が続き、政策の継続性や安定性が失われた。 - 官僚主導と癒着
政治家より官僚が主導するとされ、政策決定の透明性が乏しいと批判された。 - 既得権益の温存
公共事業や業界補助金に依存する構造が改革を妨げ、不信感を高めた。
マニフェスト導入が期待された効果
- 公約に期限・数値・財源を明記し、選挙後に検証可能とする
- 有権者に対する説明責任の強化
- 政治の透明性・信頼性の回復
- 人気投票的な選挙から、政策内容で競う選挙への転換
年表
- 1997年(英国)
ブレア労働党が公約型政党政治で成功、日本でも関心が高まる - 2003年春
統一地方選でマニフェスト型選挙が実践される - 2003年7月
21世紀臨調が「政権公約に関する緊急提言」を公表 - 2003年11月
第43回衆議院総選挙。民主党が正式マニフェストを提示し、他党も追随 - 2004年以降
早稲田大学マニフェスト研究所を中心に普及・検証の取り組みが進む
限界・批判
- 実行段階で修正・撤回が発生し、逆に不信感を助長することもある
- 短期的成果に偏り、長期的・構造的課題が後回しになる懸念
- 政官関係や利害調整の複雑さから、公約通りの実現が難しいケースも多い