センス・オブ・ワンダー(新潮文庫)

|300

Metadata

Highlights

このようにして、毎年、毎年、幼い心に焼きつけられてゆくすばらしい光景の記憶は、彼が失った睡眠時間をおぎなってあまりあるはるかにたいせつな影響を、彼の人間性にあたえているはずだとわたしたちは感じていました。  それが正しかったことを、去年の夏、ここでむかえた満月の夜に、ロジャーは自分の言葉で伝えてくれました。わたしのひざの上にだっこされて、じっと静かに月や海面、そして夜空をながめながら、ロジャーはそっとささやいたのです。 「ここにきてよかった」 — location: 85


子どもたちの世界は、いつも生き生きとして新鮮で美しく、驚きと感激にみちあふれています。残念なことに、わたしたちの多くは大人になるまえに澄みきった洞察力や、美しいもの、 畏敬 すべきものへの直感力をにぶらせ、あるときはまったく失ってしまいます。  もしもわたしが、すべての子どもの成長を見守る善良な妖精に話しかける力をもっているとしたら、世界中の子どもに、生涯消えることのない「センス・オブ・ワンダー=神秘さや不思議さに目を見はる感性」を授けてほしいとたのむでしょう。  この感性は、やがて大人になるとやってくる 倦怠 と幻滅、わたしたちが自然という力の源泉から遠ざかること、つまらない人工的なものに夢中になることなどに対する、かわらぬ 解毒剤になるのです。 — location: 128


わたしは、子どもにとっても、どのようにして子どもを教育すべきか頭をなやませている親にとっても、「知る」ことは「感じる」ことの半分も重要ではないと固く信じています。  子どもたちがであう事実のひとつひとつが、やがて知識や知恵を生みだす種子だとしたら、さまざまな情緒やゆたかな感受性は、この種子をはぐくむ 肥沃 な土壌です。幼い子ども時代は、この土壌を耕すときです。  美しいものを美しいと感じる感覚、新しいものや未知なものにふれたときの感激、思いやり、 憐れみ、賛嘆や愛情などのさまざまな形の感情がひとたびよびさまされると、次はその対象となるものについてもっとよく知りたいと思うようになります。そのようにして見つけだした知識は、しっかりと身につきます。 — location: 144


子どもといっしょに自然を探検するということは、まわりにあるすべてのものに対するあなた自身の感受性にみがきをかけるということです。それは、しばらくつかっていなかった感覚の回路をひらくこと、つまり、あなたの目、耳、鼻、指先のつかいかたをもう一度学び直すことなのです。 — location: 165


わたしたちの多くは、まわりの世界のほとんどを視覚を通して認識しています。しかし、目にはしていながら、ほんとうには見ていないことも多いのです。見すごしていた美しさに目をひらくひとつの方法は、自分自身に問いかけてみることです。 「もしこれが、いままでに一度も見たことがなかったものだとしたら? もし、これを二度とふたたび見ることができないとしたら?」と。 — location: 168


嗅覚 というものは、ほかの感覚よりも記憶をよびさます力がすぐれていますから、この力をつかわないでいるのは、たいへんもったいないことだと思います。 — location: 221